らくだの足あと 7歩目 2024.10.23
目次
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パレスチナ、ガザ戦闘1年の折に
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私のパレスチナに対する想い_all版
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パレスチナオリーブオイルの状況
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らくだ舎の循環①:巡るコーヒーかすと野菜と本
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行ってきました、大阪KITAKAGAYA
パレスチナ、ガザ戦闘1年の折に
10月7日は、パレスチナのガザ地区で、イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が始まって1年となる日でした。7日前後で、一年の戦闘を振り返るニュースや、ガザの置かれた状況を語る講演動画、ガザに思いを馳せるSNS投稿などを目にする機会が多かったのではないかと思います。
なぜこんなにも戦争が長引いてしまっているのか。わかりやすくあちらが悪い、とは言えない、誰が語るかによって見え方の変わる複雑さは、どんな戦争にもあるでしょうが、この問題は一層それが複雑に思います。そして、軍事支援という形で関わる他国の存在。ユダヤ人迫害の歴史、パレスチナの歴史、この地域だけに留まらない、理不尽さによって生まれた誰かの悲しみと憎しみが、幾重にも重なって、ガザで攻撃的に噴出している・・・不勉強な私は今、1年を振り返るニュース、解説などを読み、そのような印象を持ちました。誰が悪いのか、自分の正当性、それらを保留して、誰も殺さないことをめざして停戦すること。できるはずだと信じたいです。1年はあまりにも長すぎます。
以下は、パレスチナについて、私という個人の視点から思いをめぐらせた文章です。7月頃インスタグラムに投稿した内容ですが、文字数制限からインスタではショート版でしたが、本当は全文があったので、少し修正して載せます。
私のパレスチナに対する想い_all版
私が、パレスチナ問題を認識したのは、社会人になってからのことだった。
入社して、生協のカタログ編集を仕事にし、その商品として「パレスチナのオリーブオイル」「パレスチナのオリーブオイル石けん」を知った。私は、フェアトレード週間に合わせたチラシを担当して、100字くらいの紹介文を書くために商品の情報を調べ、「パレスチナ」について認識したのだった。
それから数年後、それらの商品を扱うオルター・トレード・ジャパン(株)、そして産地支援のために立ち上げられたNPOであるAPLAの方々と、私たち編集室の人間が、仕事の枠を超えて何かできないか、と立ち上がった会に誘ってもらう形で関わり始めた。さまざまな課題について、ドキュメンタリー映画の上映会を通して考える会を企画し、何度目かの上映会で取り上げたのが、パレスチナ問題、『自由と壁とヒップホップ』というドキュメンタリー映画だった。
見たこと、読んだことをすぐに忘れてしまうトリ頭の私。あらすじはなんとなくしか覚えていないのだが、印象に残ったのは、ライブハウスの空間で、私たちがライブに行った時と同じように、盛り上がるガザの若者たちの姿。赤いライトを浴びて叫ぶミュージシャンたち。
ヒップホップに今ほど興味がなかった私は、抑圧された状況で言葉が紡がれることの意味を、ぼんやりとしか感じていなかったけれど、その圧倒的熱量を感じたことは覚えている。パレスチナと聞いたとき、それまで私が思い浮かべていたのは、パレスチナ難民のイメージで、テントに生活している人たちだった。この映画を見たことで、ガザの壁の中には、当たり前に生活があり、ヒップホップを歌う人たちがいるのだと初めて気づいたのだった。
誰がテロリスト? 俺がテロリスト?ここは俺の祖国だぜ 誰がテロリスト?お前だよ お前が横取りしたんだろ
———————DAM「Who's the terrorist?」
らくだ舎という店舗を運営し始めることになり、オルター・トレード・ジャパンの商品を、当然扱おうと思った。私がここにいることの意味。これまでの繋がりを無に帰すことに、何か意味はあるのか?いや、ない。近くにいた時に連帯していた。遠く離れても、連帯し続けることに、価値があると思う。
そして、細々と、五年ほど、『パレスチナのオリーブオイル』『パレスチナのオリーブオイル石けん』を扱い続けてきた。ガザの大規模な空爆が起こってから、何かしたいという気持ちだけを持っていた。私がしていたことといえば、とにかくオリーブオイルを使うことだけ。ちょっと多めに使う。使って、食べながら、ガザのことをほんの少しだけ考えていた。
今年の始め、APLAがパレスチナ・ガザ地区、ヨルダン川西岸地区での支援活動に寄付を募集していたので、ごく少額を寄付した。本当は、店頭で呼びかけるなどしたいという思いもあったのだが・・・準備できなかった。本屋としては、ガザ関連の書籍などを仕入れ、目立つところにおいている、くらい。(私もまだ読んでいない・・・)
明らかに、勉強不足と準備不足は否めないけれども、言いたいし、言うことには意味があるはずだと思うから言う。私個人、現在の考えという前提で。
パレスチナの人たちが攻撃され、亡くなることは、とても理不尽なことであり、その理不尽さとパレスチナの人たちの存在を認め、支援したいと思うことは、自然なことだと思う。
先日参加したオンライン勉強会で、パレスチナ問題とは、土地収奪と先住民の迫害である、という整理をされていて、なるほどと思った。(わかったつもりになるのは危ないことだが)ガザでこんなにもたくさんの生活者の方が亡くなっていること、自由を奪われていること、容認して良いことではないだろう。
らくだ舎では、小さなできることとして、パレスチナのオリーブオイル、パレスチナのオリーブオイル石けんを、引き続き買うことができる。オンラインショップからも購入できる。7月からは、ライター佐久間裕美子さんが主宰するコミュニティ「Sakumag」を通じて知った、ガザ地区にお住まいのご家族の避難を支援するステッカーの販売も始めた。ありがたいことに、ステッカーは少しずつ売れていて、10月7日前後でも、1セット買っていただいた方がいた。きっと、停戦への願いを込めて、購入してくださったのだと思う。
ステッカーには3種柄があったのだが、たくさん仕入れたのがオリーブの木の柄。オリーブオイルの勉強会でも聞いていたことだが、オリーブの木は、パレスチナの人々にとって、この地に根ざして、ずっと存在し続けることの象徴で、特別な意味を持つ木なのだという。パレスチナのオリーブオイルは、商品でありながら、彼ら彼女らの尊厳を守る意味があるのだという。ヨルダン川西岸地区の生産者団体が生産し、販売している。これまでも、オリーブの木を抜かれたり、燃やされたりしてきた中、ガザ侵攻後、ヨルダン川西岸地区でも迫害はエスカレートしているという。そんな中、なんとか生産・出荷されて日本に届いているオリーブオイルなのだ。ほんの少しの暮らしの支えになったらと思いながら、ほんの数秒意識を向けるだけだけれど、使い続けたいと思う。

ナダさん支援ステッカー、オリーブの木。剥がれてきたので今は2枚目を貼っている。ネットショップでのセット販売は終了し、オリーブの木柄1種のみ、現在も店頭で販売中
パレスチナのオリーブオイルの状況
先日、一緒に絵本を作っているAPLAの福島さんに直接お会いしたとき、オリーブオイルの状況について話を聞いた。お店でパレスチナのオリーブオイルを販売していると、驚かれることがある。パレスチナでオリーブオイルを作っているんですか?こんな状況でも、オリーブオイルが届くんですか?などなど。
このパレスチナのオリーブオイルは、ガザ地区ではなく、ヨルダン川西岸地区の方にある農業団体が生産している。昨年12月に視聴した、オリーブオイル生産者の状況を聞くオンラインセミナーでは、ヨルダン川西岸地区でも、1年前の衝突以来、イスラエル軍による暴力的行為が増している、という報告があった。その後も状況は悪化の一途を辿っているようだ。
昨年12月時点では、なんとか今年のオリーブオイルを届けることができます、と語られていたが、10月にお会いした福島さんによると、今年2024年産については、日本に届くオリーブオイルの量はおそらくかなり減少するだろうとのことだった。上記5月の会見では、イスラエル軍や入植者たちによる行動制限、農地へのアクセスの妨害などが起きている状況が語られており、オリーブ収量の減少などにつながっていることが想像される。出荷時の制限があってもおかしくはないだろう。
この先、オリーブオイルの取り扱いが止まった時。それでも生産している方々を忘れていないこと、いつでも待っているということを伝えるための手段を考えることになるだろう。
(txt:千葉貴子)
らくだ舎の循環①巡るコーヒーかすと野菜と本
長い前置き
シャアアズナブルもサステナブル♪
最近、サステナブルとかサステナビリティとかを考える時、このフレーズがリピート再生されるようになってしまった。DNA(BIM feat Kohjiya,PUNPEE、(https://www.youtube.com/watch?v=sd9Yoze-630 )、という楽曲の一節だ。千葉家三人ともが気に入った曲。ことりさん(娘)は気に入った曲しか聴きたくないタイプで、車移動中、自分の聴きたい曲以外がかかると猛烈に怒る。私もことりも智史も聴きたいという唯一の一致点がこの曲で、ひとカ月以上、車に乗るたびにリピート再生している。メロディアスなところはまだしも、のラップ部分も結構歌えるようになってきている五歳児には舌を巻く。さて、シャアアズナブルもサステナブル・・・全く意味のわからないが、なんだか気になってしまう言葉遊びの巧みさに、ラッパーの真価を感じる。
と、ここまでは、長い前置きで。今回から、できるだけ毎回、私たちが行なっている小さな循環の試みについて、シリーズでお伝えしていこうと思う。私たちらくだ舎は、自分たちが「何か」を行う時、自然環境に対してできるだけマイナスにならないように、少しでも200年後に良い状態になっていくように、という気持ちで、しくみを作ったり、モノを選んだり、使ったり、時には使わないことを選択したり、している。
昨年北欧を訪れた時、自分たちの取り組みをきちんと、時にユーモアを交えつつ伝える、という人々の姿勢に触れた。自分たちの目指す方向、やっていることを提示することで、それを見聞きした人々の意識に働きかける。その「教育」を、企業は自分たちがすべきこととして認識しているそうだ。日本人はグリーンウォッシングを恐れ、グリーンハッシング(Green Hashing)しがち、つまり環境に良いことをしているのに黙っていることが多すぎる、とも言われて、ハッとした。
伝えようと決意してから1年経つが、この場を借りて少しずつ表に出し、ここからホームページに転載するぞ、と鼻息荒く思っている。
巡るコーヒーかすと野菜と本
この連載名、最初はらくだ舎のサステナビリティ、とかにしようと思っていた。でも持続可能性を、というより、どうやって持続していくかといえば、循環していくことで、その方がしっくりくるので、循環、とした。最もわかりやすい取り組みが、今回書くコーヒーかすと野菜と本の循環だと思う。
らくだ舎は、毎週3日、店舗営業をしている。喫茶室として、コーヒーや紅茶を提供する。ここでもちろん考えなければいけないのが、いわゆる生ゴミのことだ。宣言すると、らくだ舎喫茶室から出る「生ゴミ」はゼロである。ゼロ・ウェイスト宣言!(生、だけは)。
コーヒーかすや時折茶がらは、毎週、色川の若者農芸術家・のんちゃん(注:勝手に肩書きっぽく表現してしまいましたが、彼女がそう名乗っているわけではないです)が回収しにきて、堆肥化して利用してくれている。ご存知の方も多いと思うが、コーヒーかすには、栄養分が多分に含まれていて、良い肥料になる。そして私は、毎週彼女の野菜を仕入れて、喫茶室のフードメニューに活用している。そして、野菜のお代は、貨幣ではなく、らくだ舎の本や油など、のんちゃんが必要なものと交換している。時折、のんちゃんがコーヒーを飲むこともある。
コーヒー コーヒーかす 堆肥 野菜 本、コーヒー・・・ぐるぐると回る、循環の仕組みができている。この循環は、のんちゃんがコーヒーかすを堆肥にしてくれるから、はじまる。大地から育まれたものは、皆、大地への還していくことが基本なのだと色川で教えてもらった。
「刈った草を捨てようとしてない?草は有機物だから、土に還さなきゃ」。
草が有機物だってことはわかっていたのに。それでいいのか、ああそうなのかと、歓迎したらよかったのだと気づき、世界が一変した。土が作ったものは土に還す。そうしなければ、土は栄養を奪われるばかりだ。コーヒーかす以外のいわゆる生ゴミも、全て土に還しているのでゴミにはなっていない。家には朽ち果てたキエーロ(今改修工事中)があり、キエーロというかもはやただの土の山なのだが、そこを掘って、野菜くず、野菜やバナナの皮などを埋める。土の山は、数年間を経て、いわゆる黒ボク土っぽいものになっているので、時々そこから鉢とかプランター、畑(今は稼働できないない)に移動させて利用している。シャベルで土を掘ると、たくさんの分解者たちの姿を見ることができ、よしよし、やっちゃってくれよな、とエールを送っている。
(txt:千葉貴子)

のんちゃんが描いてきてくれた、絵本みたいな説明のカード


行ってきました、大阪KITAKAGAYA
ニュースレターあとちょっとで書き終わるぞ、というタイミングで大阪に遠征してきましたので、軽くだけ報告を。10月19日、20日の2日間、クリエイティブセンター大阪、という施設で行われた、INSECTS主催の「KITAKAGAYA FLEA」というイベントに参加してきました。今回私たちは、らくだ舎ではなくて、「Sakumag」の一員として、Sakumagの刊行物、そしてSakumagの仲間たちそれぞれの発行物を販売する、という趣旨で出店してきました。

Sakumagは、ライター・佐久間裕美子さん(みんなからゆみちゃんと呼ばれています)の主宰するコレクティブ(ゆるやかな人々の集合体、アートの文脈では、制作物をつくる共同体、のようなニュアンスで使われるようです、これは貴子の個人的解釈です)です。ゆみさんメルマガ有料会員になると、slackURLより参加することができます。オンラインサロンとも近いイメージで問題ないとは思うのですが、一緒に何か作っていくところ、ゆみちゃんが中心にいるようでいない感じなどが、ちょっとオンラインサロンとは違うのだと思います。これまで、Sakumagは、『We Act!』など精力的に書籍を刊行されてきて、5冊プラス今年に入ってWe Note というノートも出されています。

カラフルな『We note』。真ん中に行動を後押しする文章のページが挟まれているのが特長。私たちの本でも使用した「竹紙」100%で作られています。らくだ舎でも近々販売開始予定
私たちはこれまで、本屋としてWe Act!等の書籍を取り扱わせてもらったり、メルマガ購読者としてSakumagの動きを知ったり、とゆるやかに関わっていたのですが、我々の書籍『ニ弍に2(にににに)』にゆみちゃんから「家庭内運動からSakumagというコレクティブへ」という文章を寄稿いただいたところからご縁が深まって、今年に入ってなんだかトントントンと自然にコレクティブの一員に入っていった感じがあります。今回は、前職からの知人であったカメラマンの疋田さん、そして5月に本は港(横浜)のイベントに来てくださって出会ったさやかさん、みつるさんの3名と、初日はえりさんという初めましての方と一緒に出店してきました。(ブースとしては、私はかなりの時間を子どもと過ごす形になり、あまり戦力にはなれなかったのですが・・・)
『ニ弍に2』という書籍を昨年10月に出版してから、外に出て売っていくこと、を意識して行動しています。とくに2024年は、全国ツアー的に、とにかくさまざまな場所に出帆して行く年と位置付けています。この出店もその一環なのですが、改めて時折外に出て、自分たちのことを話すことの重要性を確認したように思います。これまで全く接点のなかった方が、足を止めて話を聞いてくれて、応援価格で本を買ってくださった時はとても嬉しかったですし、高野山の方の同じような300人くらいの集落に移住して暮らしているという女性と出会うなど、予想もしない出会いがありました。今年の2月にご自宅に泊めていただき、イベントをした鳥取「汽水空港」のモリさん、アキナさん、ミチくんと再会して一緒に遊べたこともとても嬉しかったし、「本は港」で一緒にトークさせていただいた神奈川「生活綴方」の鈴木さん、「三輪舎」の中岡さんなど再会できた方、また今回のイベントで知り合えた方もたくさんいました。和歌山の山里に暮らしながら、こうした場所で本を介して関係性を広げていくことは、私たちの刺激になると同時に、この地を訪れる人が増えたり、それによって何かが始まるきっかけになったりするのではないかと思っています。(実際に、生活綴方でお店番のグループに入っているという方が、和歌山県を訪れた機会にらくだ舎まできてくださったこともありました)。
動くことで、円状に広がっていくつながり。そのつながりからまた次の動きへ・・・こうした交換活動を繰り返して生きていきたい。それはなぜなのか?と問われると難しいのだけれど、単純にそれが楽しいし、よりよく生きることにつながる予感がするからなのかな。目が開かれる瞬間、同じだよ〜と共感する瞬間、そんな心動く瞬間をできるだけたくさん積み重ねたいという欲があるのだな。(txt:千葉貴子)
『バナナのらんとごん』クラファン達成&予約開始しました
8/7〜9/30まで行っていた、『バナナのらんとごん』出版プロジェクトについて、無事にクラファン目標250万円達成できました。ご支援、応援いただいた皆様、どうもありがとうございました!金額達成できたこともですし、300人以上の方にご支援いただけたことが本当にありがたいです。今制作の佳境にあり、また落ち着いたタイミングで、振り返りや現況をお知らせしたいと思います。
表紙デザインがほぼ完成したこと、またイベント出店時にご紹介したかったこともあり、10/20よりネットショップにて予約開始しました。クラファンにご支援いただいた方へのリターンから発送しますが、その後予約いただいた皆さんに発送していきます。気になっていた方、購入しようと思っていた方がいましたら、どうぞ予約もご利用ください。(店舗でも、納品次第販売していきます。)ネットショップのページはこちらです▼
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だいたい週1回、いま考えていることややっていることなどをテキストに起こして、近況を報告する手紙のようにお伝えするニュースレターです。そのほか、本や本屋にまつわること、お知らせなどもお伝えしています。
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